研究室紹介
居住福祉研究室
ものづくりには利用者のニーズや生活像を把握することが必要不可欠です。居住福祉研究室では、設計者やデザイナーに自らの意思を伝えることが困難な高齢者や障がい者等の要求を、利用者の視点(User’s point of view)から汲み取り、これらの人々にとって望ましいモノ、住まい、地域のあり方について研究しています。近年は、参加型の研究手法を用いて建物やモノを実際に使う利用者を育てる活動にも取り組んでいます。
高齢期における住まい方に関する研究
高齢者の住まいを取り巻く環境は、大きく変化しています。高齢者施設における個室化や生活単位・介護単位の小規模化(ユニットケア)。小規模多機能型居宅介護など住宅生活を支える地域密着型施設の創設。さらには、高齢期における新しいライフスタイルを提案するサービス付き高齢者向け住宅など。急速に進む高齢社会に備えたさまざまな新しい取り組みが行われています。居住福祉研究室では、これらの先進的な事例の使われ方を調査し、その有効性や改善点について検証しています。
また、研究で得られた成果を踏まえて、実際に建設される施設や住宅へのアドバイス(設計監修)も行っています。自らが関わった施設に対しては、使用後調査(POE調査:Post Occupancy Evaluation)を実施し、「検証→計画→設計→使用→検証→計画」という絶え間ない環境改善サイクルの構築を目指しています。
コミュニティ施設に関する研究
コミュニティの重要性については誰しもが理解するところですが、様々な面においてコミュニティが衰退化しています。地縁や血縁といった人々をつなぐ紐帯は細くなり、単身世帯の増加は、その問題をより深刻化させています。コミュニティの再構築には、一人ひとりの市民が環境に対して働きかけ、関係性を織り上げていくことが重要です。ですが、一人ひとりの力は小さく、関係性を築き上げる段階までには到らないことも多くあります。そこで本研究室では、ケアという考え方や仕組みをコミュニティ形成に取り込み、関係性の構築を支援する物理的環境、人的環境について検討を行っています。
利用者参加型の計画
設計時には利用者参加型のワークショップを実施しています。ワークショップの目的は、利用者である介護職員や高齢者、地域住民の建物に対する愛着を生みだすことにあります。当研究室では竣工から年月を重ねるにつれて、より良くなる建物を目指しています。そのためには、利用者が愛着を持って建物の維持管理や改善に関わっていく事が重要です。利用者に設計というプロセスに関わってもらい、建物の中にその痕跡を残すことで、愛着を生みだす活動を行っています。また、ワークショップでは、研究からは明らかにすることができない、さまざまな設計条件を導き出し、それらを設計に反映させていく活動も行っています。
ひと-モノー空間に関する研究
人間工学分野では、ユニバーサルデザインやノーマライゼーションの理念に基づき「ひと―もの―空間」の関係性について研究しています。利用者の自立と介護者の負担を軽減する調整機能付き車いす、機械浴としても利用できるユニバーサルデザインの浴槽、移乗が行いやすい歩行器など、プロダクトデザインや理学療法、作業療法の専門家と一緒に福祉用具の研究を行っています。特に、これらのモノに必要な動作寸法や、福祉用具が利用者の生活に及ぼす影響について研究しています。